相続の一般的効力
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない(民法896条)
『相続の開始』は、自然人である個人が死亡した瞬間に発生します。 よって『相続の開始』という事象は、相続人が被相続人の死亡の事実を知っていたか否かを問わずに被相続人が死亡した瞬間に自動的に発生する事になります。
趣旨
相続によりこれまで被相続人が主体であったすべての法律関係が全体として新たな主体(相続人)に承継されるという、相続法の基本原理を示しています。
相続人に承継されるのは単に具体的な権利義務だけでなく、権利義務として具体的に発生するに至っていない財産法上の法律関係ないし法的地位も承継します(申込みを受けた地位、善意者・悪意者の地位等)。
相続財産の範囲
占有権
相続人が相続財産を現実に支配するに至ったか否かを問わず、被相続人の有していた占有権が相続人に承継されます(最判昭44.10.30)。
借家権
被相続人と同居しているのが内縁の妻である場合、家主からの明渡請求に対し、内縁の妻は相続人の賃借権を援用し得る。もっとも、内縁の妻は相続人と共に共同賃借人となるものではないから、賃料の支払義務を負わない(最判昭42.2.21)。
また、内縁の妻は相続人からの明渡請求に対して、権利濫用を主張してこれを拒むことができます(最判昭39.10.13)。
一般法上の借家権は財産権として相続される。特別法上のものは、その法規に従って決まる(借地借家36条等)。公営住宅の入居者が死亡した場合、その相続人は、その使用権を当然に承継するものではないとされている(最判平2.10.18)。
損害賠償請求権
判例・通説は、生命侵害による財産的損害の賠償請求権(大判大15.2.16)、及び慰謝料請求権(最大判昭42.11.1)のいずれについても相続性を肯定しています。
保証債務
普通の(具体的な債務額の確定している)保証債務は相続されるが、身元保証債務は、債務者の相互の信頼が特に強く、特別の事情がない限り相続人に承継されません。
無権代理
無権代理人が本人を相続した場合
本人が自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位が生じます(最判昭40.6.18)。
無権代理人が本人を他の共同相続人と共に共同相続した場合、共同相続者全員が共同して追認しない限り、無権代理行為は無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではありません(最判平5.1.21)。
本人が無権代理人を相続した場合
本人は追認を拒絶しても信義則に反しないが(最判昭37.4.20)、117条による無権代理人の責任は承継します(最判昭48.7.3)。
一身専属権 譲渡や相続の対象にならず、差押えすることもできません。
被相続人の一身に専属する権利義務とは、被相続人だけに帰属して相続人に帰属することのできない性質を有する権利義務をいいます(帰属上の一身専属権)。
① 身分法上の権利
扶養請求権、婚姻費用分担請求権、離婚請求権、認知請求権 など
② 人格権
著作者人格権 など
③ 個人の信頼関係に基づく権利
代理権 など
④ 不代替的給付に関する権利
雇用契約上の権利 など
⑤ 人的色彩の強い団体構成員たる地位
組合契約における組合員の地位
⑥ 社会保障上の権利
生活保護、各種年金受給権 など
祭祀に関する権利の承継
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継します(897条1項)
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